リベンジ!〜大変身は、恋の始まり⁉︎〜
「腹ぱんぱんだ。食い過ぎた」
「ごちそうさまでした。本当お腹いっぱいになりましたね」
食事を終えた私たちは、日本料理店を出るとエレベーターに乗って宿泊する部屋のある26階まで降りた。
静かに廊下を歩きながら、少し前を歩く部長の背中を見て思った。
部長は、今日の私ならって言ってた。
綺麗なワンピースを着て、カッコイイ靴を履いて。髪も上げてメイクもちゃんとしている私なら、冗談かもしれないけれど「付き合ってやってもいい」と言った。
じゃあ、明日になったら。
この髪もいつもどおりで、メイクも下手くそにしかできなくて、このギャップもなくなったら。
さっきみたいな笑顔も、今日の夢みたいな時間も。
今までみたいに…なくなってしまうんだよね。元に、戻っちゃうってことだよね。
あと少しで部屋の前に着いてしまいそうになった時。
私はふと立ち止まり、部長を呼び止めた。
「あの!部長」
振り返った部長は、キョトンとした顔でこっちを見ている。
「なんだ」
「…や、すいません…なんでも…ないです」
呼び止めたくせに、言いたいこともまとまっていなくて、何も言えない。
「…おやすみ、なさい」
「あぁ。おやすみ」
そして部長も、私に何も聞き返すことなく隣の部屋へと先に消えてしまった。
「おやすみなさい…」
誰もいなくなった廊下に、寂しげな自分の声だけが…小さく響いた。