クールで不器用な君。
「瑠璃、おかえりなさい」
「おかえりなさいませ」
「お母さん、あきさん、ただいま」
「瑠璃、後ろに居るのってもしかして藍くんなの?」
「藍くん?」
「そ、七瀬藍くん」
「お久しぶりです」
お久しぶり?
どういうこと?
「もう、随分かっこよくなっちゃって~。モテるでしょう?」
「いえ、そんなことないです」
「まぁ、まぁ、そんなこと言って。そんなに固くならなくていいのよ?」
二人の話に全然ついていけない。
「お母さん、どういうこ…」
「ささ、リビングに行きましょ?」
久々に帰って来て、娘の私は無視ですか?
お母さんは七瀬くんをリビングに招き入れると、話し始めた。
「えっと、簡潔に言うと、これからしばらく藍くんと一緒に住んでもらいまーす」
え?
「お母さん、何言ってるの?」
「もう決まったことだし、拒否権はありませーん」
そんな、横暴な……
「でも…!」
「藍くんのご両親、海外に転勤になっちゃったみたいなのよ。だからうちで預かろうってなったの!」
きゃはっ、というような顔でものすごいことを言ってくる。
この人、本当に私のお母さんかな
キャラが若すぎるよ
ちょっぴり無理があるよ、と言いたいのを飲み込み我慢した。
「本当は俺も着いて行こうとしたんだけどダメだって言われたんだ」
「順に言うと、藍くんのご両親とは昔からの仲なの。
だから、瑠璃は昔、藍くんに会ったこともあるのよ?
あ、でね、そのご両親が海外に転勤になって、でも藍くんに高校を辞めてまで連れていくのは可哀想だから、うちで預かってくれないかって話になったのよ〜」
「それなら……って、私と七瀬くんって会ったことあるの!?」
私全然覚えてないよ…
七瀬くんは覚えてるのかな。
一瞬、七瀬くんに目をやるけど、反応はなかった。
もし覚えてたら、私だけ忘れてしまって申し訳ない。