クールで不器用な君。
「あ!お母さんもうそろそろ仕事に戻らなきゃ。瑠璃、藍くん、またしばらく留守にするけどよろしくね」
「はい」
「いってらっしゃい!」
慌ただしく玄関を飛び出して行くお母さんを、明るく見送る。
「………なんかいきなりで頭が着いて行かないよ」
静かになった家で、ポツリとつぶやく。
「今日は挨拶に来ただけだから帰る。多分うちの親、明日には家を知り合いに貸すみたいだから明日からよろしく。」
「う、うん。よろしくね」
七瀬くんは平然とした態度で玄関を出て行った。
更に静けさを増した玄関で扉を見つめ、不意に下へと視線をそらすと、私のローファーが置かれた横になにか反射して光るものがあった。
「ん?なんだろう」
拾ってみると、それはビーズで出来た綺麗な指輪だった。
「七瀬くんのかな?」
男の子が持つには随分と小さくて可愛らしいものだ。
七瀬くんのだよね……?
私はこんなの持ってないし。