クールで不器用な君。
花火と浴衣と恋と
花火大会当日のある光景。
「できたわよ、瑠璃。」
花火大会の日は毎年帰ってくる私の両親。
なぜなら、毎年二人で花火をみているからだ。
いつも仕事が忙しい分、なかなかデートにいけない二人にとって、今日は年に数回のデートの日。
そして今はお母さんに浴衣を着つけをしてもらっていた。
「お母さん、ありがとう。どうかな?変じゃない?」
百合の描かれた紺色の浴衣。
去年まではは薄い桃色のだったが、今年はお母さんが新調してくれた。
大人っぽくてすごくいい。
「とってもかわいいわ。さすが私の娘ね。あ、待って。」
「ん?」
サイドでお団子にして毛先を少し巻いた髪にお母さんは何かを刺した。
「これで良いわ。」
そういってニコッと笑うお母さん。
鏡で見ると、それはかんざしだった。
「おお、瑠璃~、すごく似合ってるぞぉ!でも、お父さんは変な男が寄り付かないか心配だ……。」
と、泣き真似をする。
「あなた、瑠璃には守ってくれるかっこいい王子様が居るじゃない。だから大丈夫よ。」
「あ、あぁ、そうだったな……。瑠璃、くれぐれも藍くんのそばを離れるんじゃないぞ?」
「うん。」
「ほら、藍くん、外で待っていてくれているんでしょう?はやく行ってあげなさい。」
「行ってきますっ。」
二人に見送られて私は家を飛び出した。