クールで不器用な君。
席を移動させると、左隣の人を確認した。
そこには、あの人が座っていた。
何にもいじっていない、綺麗な黒髪。
透き通った白い肌。
そんな彼はイヤホンを付け、空を眺めている。
彼のことを私は知っている。
いや、知らない人は居ないくらい有名だ。
七瀬 藍
クールで無愛想だけど、かっこいいルックスが人気でモテているらしい。
でも当の本人は恋愛に興味が無いと、告白されても全て断っているとか。
「山瀬さん……だよね?」
七瀬くんは片耳のイヤホンを外し、私の名を呼ぶ。
「へ?あ、はい。そうですけど……」
急にどうしたんだろう
「俺の顔に何か付いてる?」
「いえ、付いてないです」
「そう?さっきから視線を感じたから、何か付いてるのかと思った」
私そんなに七瀬くんのこと見てたのかな
は、恥ずかしい
「ご、ごめんなさい」
「いや、別にいいけど」
とだけ言うと、再びイヤホンを付け、視線を空へと逸らす。
「瑠璃〜、瑠璃?」
「へ?」
「どうしたの、ぼーっとして。ってか席前後じゃん!近い、かなり近い!」
「うんっ、やったね」
「……というか、瑠璃の隣の席、七瀬だね」
七瀬くんには聞こえないような小声で、裕美ちゃんは言った。
七瀬くんのことが少しだけ気になったということは、祐美ちゃんには言わないでおこうかな。