クールで不器用な君。



昼休み、祐美ちゃんと一緒に食堂に来ていた。



「うーん、やっぱり混んでるわねぇ。座る場所あるのかしら」




「確かに…皆人で埋まってる」



食堂はいつも混むから、早く来ないと座る席がなくなってしまう。



「おーい!山瀬さん達〜!ここ空いてるから来なよー」




ぶんぶんと手を振りながら私たちのことをのは、同じクラスの佐伯雄太くん。




「佐伯くんありがとう。でも、誰か他に座る人がいるんじゃないの?」




佐伯くんの元へと行くと、席が確保されていた。



「いえいえ、そんなことは気にしないでください。お姫様がお困りのようでしたので、助けたまでですよ」




と、かしこまるけど、私はお姫様ではない。



そもそもなんなんだろう、その「お姫様」あだ名は。



「さ、佐伯くん、そういうのはやめてよ。というか、お姫様って何?」




「いやぁ、だって、山瀬さんはうちの学校のお姫様だからね」



お姫様?



正直、よくわからない。



「よくわからないよ。それって、喜ぶべきなの?」




「瑠璃って、こういうことに関しては疎いし、天然よね」



「うんうん」



祐美ちゃんの言葉に頷く佐伯くん。



そんな話をしている中、不意に視線を逸らすと、人混みの中に七瀬くんがいた気がした。




気のせいかもしれないけれど。




「瑠璃、どうしたのよ」





「今、七瀬くんを見た気がしたの」



「あの七瀬が?ないない。七瀬はいつも購買で適当に買って、どっかで一人で食べてるんだ。購買はまた別の場所にあるし」



気のせいだよ、と言う佐伯くん。



それに頷く祐美ちゃん。



そう、かな…………?



やっぱり見間違え?



「佐伯の言う通り、昼休みはいつも一人でふらっと教室からいなくなって、気づけば戻ってきてるって感じだし」



七瀬って人混みとか嫌いそうだしね。



と祐美ちゃんは付け足す。




どうしてだろう、こんなに気になってしまうのは……



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