memory
とりあえず朝ごはんを食べることにして、台所に降りた。
「おはよう、母さん。」
「おはよう。今日は早いわねー。」
テーブルにはコンソメスープ、サラダ、サンドイッチが置いてある。
僕は静かに椅子に座って、サンドイッチを手にとって食べた。
「ねえ、母さん。僕が10歳の時のこと、覚えてる?」
シルクに言われたことを思い出して、なんとなく聞いてみた。
「どうしたの、急に。」
「いや、別に。」
少し不自然だが、なんとなく誤魔化した。
「私は母親よ。あんたが生まれた時から今まで、全部覚えてるに決まってるでしょ。」
「じゃあさ、10歳の時のこと覚えてる?」
「なんで10歳限定なのよ。えーと。」
そこで母さんがピタリと止まった。
「次元、あんた小学校の入学式したっけ?」
何を言い出すんだ、この人は。
「入学しなかったら卒業できないし、小学校、中学校の義務教育の課程を終えてなかったら、僕は今高校生ではないんだけど?」
「いや、そうよね。あら、おかしいわね。そういえば、あんたって気がつけば中学生になってたのよね。」
「ふざけてるの?」
子供が、気がつけば12歳でしたって?まぁ、確かに子供の成長は早いってよく言うけど。
「まぁ、いいじゃないのそんなこと。あ、もうこんな時間。ちょっと出かけてくるわね。」
「はいはい。行ってらっしゃ~い。」
風のように颯爽と去って行った母を見送り、僕は自分の部屋に戻ろうとした。
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