それはきっと始まりでしかなく
始まりでしかなく
一言でいうなら若い、だ。とにかく若い。といっても医者としているなら三十は回っているはずなのだが、若いのだ。まだ見た感じ二十代といってもいい。
なので、だ。
こんな田舎の診療所にいれば、やってくるのは年配ばかりだ。
若い先生がきたというのは田舎ではひとつのニュースでもあった。一時期たいした症状もないのに診療所にくるという人もいて大変であったらしい。いや、と思う。今もそれなりに興味の対象らしい。
興味、ねぇ…。
「なんでこんな田舎に、ですか?募集があったからですよ」
後日ばったりと会った佐野さんは、そう話していたが胡散臭いと思った。こんなに若い先生が田舎にくるなんて。
都心で働いていたが、何事も経験だとあっさり応募したらしい。給料とか違うだろうに、と思う。なんたらの診療所、とか前にドラマあったなだなんて余計なことを思い出す。
しかも期限つきなので、二年だけここにいるというそれは短いのかそうじゃないのかわからない。
ここにくる先生は、大抵が年配の人ばかりだ。佐野先生の前の医者もそうだったしその前もそう。私が知る限りでは佐野先生が一番若いんじゃないだろうか。診療所だから大抵患者は重い病気ではないから楽だろう。多くは風邪とかそういうのだ。子供だって少ないから、風邪で診察しに来ることも少ないはずだ。
あれか、権力争い、とか?
それこそドラマの見すぎだろう。