それはきっと始まりでしかなく
浜辺までをひたすら歩き、砂浜に足を踏み入れる。そのあと、丸い石ばかりのところにでてから、また少し歩く。
タオルケットや着替えなんかを入れた鞄をおろし、あ、と思う。奥には子供づれで海水浴らしい姿が見えた。
――――結婚しましたー!
――――彼氏と旅行なの!
二十歳を過ぎて高校時代から付き合っていた人と曖昧になったっきり、私は彼氏なんていうものとは縁がない。大学も学費が払えなくなり、除籍扱いとなった。勉強は好きだったのに、学費が払えなくなったのは兄が借金を作ったからであり、もうどうしたらいいかわからなかった。ごめん、だなんて親から聞きたくなんかなかった。
彼氏とは自然消滅に近い。だってもう何ヵ月も連絡がない。就職が決まったというそれっきりだ。生きてはいるだろうが、今さら連絡きてももとには戻れないだろう。
同級生ともとっくに疎遠で、彼女らのSNSとかも見るのが辛かった。このくらいの歳になれば、結婚の文字も踊るようになる。彼氏やら、へたしたら二股云々のことも大っぴらに公開していたりなんかして、私を蝕む。好き勝手に出来ている彼女らが羨ましくて。
私は一人で、ここにいる。
自暴自棄だ。
結婚、彼氏、そんなの知るか。何故みんなみんな、いい人いないの?とか聞いてくるのだろう。
ああ、本当に。
ゆらゆらと波にゆられながら、このまま溶けてしまえたらだなんて思う。
「陽さーん」
幻聴か、と思った。