あなたへ。
「このままでもいい」
「このままって?」
「ここにずっといるの」
「ここに?」
「うん」
「つまらなくない?」
「うん」
「じゃあそうしようか」
「うん」
私は人と話すのは苦手なのに、彼と話すのは楽しかった。
そうしてだろう?
けっきょく彼と私は三時間もその喫茶店にいた。
カプチーノ一杯で三時間。
最後には冷え切っていて、味も美味しくなかった。それでも私を彼はそれを口に運んだ。
「来るときは何で来たの?」
「バス」
「帰りは?」
「バス」
「送ってこうか?」
「なにで?」
「車」
「自転車じゃないの?」
「そう」それから、
「自転車のほうがよかった?」
「たぶん」
喫茶店の壁に掛かっている大きな時計がボーンと鳴った。
私と彼は時計を見る。
午後一時。
「そうだ、お昼食べてないよね?」
「うん」
「ここで簡単に済ませちゃおうか?」
「うん」
彼が小さなメニューを渡す。私はそれを少しだけ眺めた。
「なににするの?」
「僕?」
「うん」
「僕はピラフにしようかな」
私はもう一度メニューに視線を落とす。
「決まった?」
「うん」
そう言うと彼は店員さんを呼んだ。さっきと同じ人。もしかしたら店員さんはこの人しかいないのかもしれない。たぶん。
「ご注文よろしいでしょうか?」
「ピラフと、」
「同じの」
店員さんがメモを取る。
「ピラフがお二つでよろしいでしょうか?」
「はい」
「それでは少々お待ちください」
私は店員さんの後ろ姿を目で追う。その後彼を見るとメニューを手に取って眺めていた。
私は店内を見渡す。本当は小さいのかもしれないけど、お客さんが私と彼しかいないからか広く感じる。カウンターがあってその奥では男の人が料理をしている。女の店員さんは私と彼の近くのテーブルを拭いていた。
私は店内を観察するのに飽きて、彼をじっと見る。
「どうしたの?」
彼が顔を上げて私に聞いた。
「北海道ってどんなところ?」
「北海道?」
「うん」
「いいところだよ。緑が多いし夏は過ごしやすいし。あ、でも冬は雪かきをしないといけないから大変かな」
「雪、積もるの?」
「そうだよ」
「このままって?」
「ここにずっといるの」
「ここに?」
「うん」
「つまらなくない?」
「うん」
「じゃあそうしようか」
「うん」
私は人と話すのは苦手なのに、彼と話すのは楽しかった。
そうしてだろう?
けっきょく彼と私は三時間もその喫茶店にいた。
カプチーノ一杯で三時間。
最後には冷え切っていて、味も美味しくなかった。それでも私を彼はそれを口に運んだ。
「来るときは何で来たの?」
「バス」
「帰りは?」
「バス」
「送ってこうか?」
「なにで?」
「車」
「自転車じゃないの?」
「そう」それから、
「自転車のほうがよかった?」
「たぶん」
喫茶店の壁に掛かっている大きな時計がボーンと鳴った。
私と彼は時計を見る。
午後一時。
「そうだ、お昼食べてないよね?」
「うん」
「ここで簡単に済ませちゃおうか?」
「うん」
彼が小さなメニューを渡す。私はそれを少しだけ眺めた。
「なににするの?」
「僕?」
「うん」
「僕はピラフにしようかな」
私はもう一度メニューに視線を落とす。
「決まった?」
「うん」
そう言うと彼は店員さんを呼んだ。さっきと同じ人。もしかしたら店員さんはこの人しかいないのかもしれない。たぶん。
「ご注文よろしいでしょうか?」
「ピラフと、」
「同じの」
店員さんがメモを取る。
「ピラフがお二つでよろしいでしょうか?」
「はい」
「それでは少々お待ちください」
私は店員さんの後ろ姿を目で追う。その後彼を見るとメニューを手に取って眺めていた。
私は店内を見渡す。本当は小さいのかもしれないけど、お客さんが私と彼しかいないからか広く感じる。カウンターがあってその奥では男の人が料理をしている。女の店員さんは私と彼の近くのテーブルを拭いていた。
私は店内を観察するのに飽きて、彼をじっと見る。
「どうしたの?」
彼が顔を上げて私に聞いた。
「北海道ってどんなところ?」
「北海道?」
「うん」
「いいところだよ。緑が多いし夏は過ごしやすいし。あ、でも冬は雪かきをしないといけないから大変かな」
「雪、積もるの?」
「そうだよ」