あなたへ。
1-4


 冬休みは何もする事が無かった。
 部活も引退して、私は受験勉強をし始めた。いきなり未来設計から外れた。
 彼はまだトランペットを吹いていた。文化部は引退が遅い。
 年が明けても私の生活は何一つ変わらず、私は退屈していた。
 走ろうかな。そう思って家を出て、近くの公園を何周もした。
 こんなときにランニングをしているのは私だけ。たぶん。
 ただひたすら走って、暗くなってから家に帰った。
 冬休みはずっとそんな感じ。


 三学期はみんな受験勉強で忙しかった。
 私立大学を受けた人では合格した人も出てき始めた。
 私のクラスで就職組みはたったの五人。
 その中に彼も入っていた。
「就職するの?」
「そうだけど」
「なんで?」
「大学行ってもやりたいことがないから」
「やりたいことがないと入っちゃダメなの?」
「よくわかんないな」
「なにそれ?」
「君はなんで大学に行くの?」
「なんとなく」
「未来設計と違うよ?」
「修正したの」
「修正?」
「うん」
「どんなふうに?」
「高校の後に大学が入っただけ」
「ふ~ん」そのあと彼は、
「僕も大学に入ろうかな」
「なんで?」
「やりたいことを探しに」

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