それでも僕は君を離さないⅡ
俺は手を離し

椅子から立った。

奈々は俺を見上げて言った。

「一つだけ聞いておきたいことがあるんです。」

「うん。」

「私はここに来る必要があったのではないですか?会社の旅行でなく何か他の理由があったはずです。その理由を知っていたら教えてもらえませんか?」

俺は言おうか言うまいか躊躇したが

この先その話しが出ることはないと思い答えた。

「俺の出身地だから、社員旅行に乗り気でなかった君を俺が説得したんだ。」

奈々の目から涙が流れ出した。

彼女はすすり泣きから

しだいに嗚咽をもらし

目を真っ赤にして泣いた。

「ごめんなさい。泣いたりして。」

俺は奈々の涙声にそそられた。

泣き止むのを静かに待った。

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