それでも僕は君を離さないⅡ

「まずその前に伝えておきたいことがあります。」

先生は記憶とは何なのかを私に教えてくれた。

「つまり人間の脳には引き出しや押し入れがいくつもあって、押し入れの奥にあるものは忘れられていると言えます。」

先生の説明はとてもわかりやすくて私は理解できた。

「しかもそれがオブラートのようなもので包まれていたらさらにわからないでしょう。」

「わからないです。」私はうなずきながら言った。

「普段必要のないもので押し入れの奥にしまい込んであるものを、どうやってそれが何だったかを思い出すことができるか、それにはきっかけがあればいいんです。」

「きっかけですか？」

「そうです。例えば母親が子供の学校でバザーがあると知り、自宅にある不用品をリサイクルできないかと考える。そして彼女は押し入れの奥にしまい込んであった使われてないものを見つけた。それは彼女が忘れていたコーヒーカップだった。そのカップは数年前に叔母からもらった高価なブランドもののカップだった。彼女はバザーというきっかけがあったからそのカップを見つけることができたんです。」

私は先生の貴重な話を真剣に心にとめた。