それでも僕は君を離さないⅡ
「僕の観察眼が気にさわった?」

「奈々が言う通り、俺たちは似すぎる。」

「へぇ、そうか。いいこと聞いたな。」

彼はいきなり拳で壁をドンと叩き

僕に顔を近づけてすごんだ。

「坂下、いい気になるなよ。」

僕は静かに言い返した。

「笹尾、僕が彼女を狙っていることをよく覚えておいた方がいい。今でもだ。」

しばしお互いの目をにらみ合った。

先に僕の方から目をそらした。

「じゃ、僕はデスクに戻らないと。久保主任によろしく。」

最後にチラッと彼を一瞥して資材室を出た。

彼は先週よりもマシな様子だった。

事故のショックは強弱はあるものの

その場に居合わせた誰をも情緒不安定にさせる威力がある。

彼とてそれはまぬがれない。

そして奈々は僕でなく彼を選んだ。

その現実はすでに僕の中で受け入れられていた。

さっきの脅しは彼を刺激させるには充分だっただろうか。

僕はあの二人を見守れる立場にいたかった。

なぜなら彼らの想いは

事故前はもっと確証が感じられたが

今は不安定に思えてならないからだ。

僕の思い違いならいいのだが。

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