それでも僕は君を離さないⅡ
「奈々?」

「はい。」

私は笹尾先輩の声に驚いた。

彼は資材室のデスクに腰をかけて

長い脚を軽く組み

ラボの白衣の前をはだけたまま腕も組んでいた。

私は奥の棚から小走りで駆け寄りながら聞いた。

「お急ぎですか?」

「いや、ちょっと寄っただけだ。」

彼はむくれた私を見て面白がっていた。

「仕事中です。それから社内では樋口と姓で呼んでください。」

「あっはっは。」

「何がおかしいんですか?」

「俺がさん付けで呼ぶわけないだろ?」

「どうしてですか?」

「俺は奈々にだけ甘くなれる。前にも言っただろ?」

彼は組んでいた脚を開いて

前に突っ立った私を両膝で軽くはさんだ。

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