それでも僕は君を離さないⅡ
俺は余力がなかったにも関わらず

彼に手を貸して上体を起こしてやった。

錆びた鉄の匂いがした。

正確には血の匂いだ。

それにガソリンの臭いが鼻にツンときた。

坂下が何か言った。

「何?」

俺は彼と目を合わせた。

奈々!

俺たちは背筋を凍らせた。

彼はきしんだ体をどうにか動かそうともがいた。

俺は悲惨な車内に目を向けて

奈々を探した。

ダメだ。

あふれた物で視界を遮られ見つからない。

絶望がよぎった。

「奈々を探せ。早く!」

坂下が俺に叫んだ。

「僕のことはいいから行け!」

俺は彼の声で我に返った。

奈々を助けなければ。

一瞬最悪の恐怖が俺の心臓を突き抜けた。

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