雨のち晴れ


「ん…」

ぼんやりとした頭で、起き上がる。

外を見るとなぜか明るかった。

あれ、今 何時…?

床には投げつけられた枕。
テーブルの上にはマスターからの手紙。

そしてチカチカ光るスマホ。

いつからか、時間が止まったように感じる。

時計を見ると、時刻は午前8時を指していた。

「あれ…」

どういうこと?落ち着いて考えてみる。

確か寝始めたのが、午前7時とか8時だった気がする…

デジタル時計には木曜日という表示。

何かおかしい。

「もしかして…」

私、1日中寝てたの?
そのまま夜を越して次の日の朝まで。

うそ…

慌ててバイトのシフトを確認する。

———良かった、シフト入っていなかった。

にしても、そんな24時間、平気で寝てしまうなんて…
むしろ昏睡状態に近い感じ?

よっぽど現実から逃げたかったのかな。

テーブルの上にあるマスターからの手紙を大切に引き出しに戻し、スマホを見た。


たくさんの着信履歴。
あの時、鳴り止まなかったからな。

そして、正樹から意外にも1通だけメール。

【From 正樹

土曜日、11時に
池内公園の噴水の所で待ってる。】


土曜日、そういえば紅葉を見に行くなんて話をしたっけ?

確かに今週末は見頃かもしれない。

でも今はそんな気分になんか、なれるはずがない。

紅葉を楽しむどころじゃない。

私は悲しみのどん底にいるんだよ?


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