雨のち晴れ


——土曜日。

私は朝から身支度をし、待ち合わせの公園へと向かった。

ずっとずっと悲しみの中、考えて出した答え。


正樹からちゃんと話を聞こう、と。

ちゃんと現実を受け入れよう、と。



公園にはたくさんの人たちがいた。

木々は綺麗に色付いていて、まさに見頃。

秋雨前線も去ったのか、秋晴れにも恵まれ、絶好の紅葉狩り日和。

少し肌寒いが、とても気持ちの良い気候だった。

まだ待ち合わせの時間まで30分あった。

家では落ち着かず、早くに出た。

もちろんまだ正樹は来ていないだろうと思いながらも、噴水へ向かう。

そもそも、正樹は今日来ているのかな。

メールの返信もしなかったし、もしかしたら来ないかもしれない。

それならそれで、もう、割り切るしかないかな。

そんなことを考えながら、噴水の前まで来た時、私は足を止めた。

「正樹…」

ジャケットにニット帽をかぶった男性が、腰掛けて下を向いていた。

間違いなく、正樹だった。


なんで…なんでもういるの?

30分もまだあるのに。


ふと正樹は顔を上げ、視界の中に私を捉える。

「紗子っ…!」

その瞬間、正樹は立ち上がり、私に駆け寄りそのままの勢いで私を抱き締めた。


冷んやりとした正樹の身体。

ずっと待ってたの?


「紗子…良かった。来てくれて。」

「……。」

それでも温かい正樹の温もりを感じて、私は抱き締められたまま、正樹を拒むことはしなかった。

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