雨のち晴れ



「あの…このたび、T大に通います。引っ越しも済んで、ここの近くに住むことになりました。」

「そう。」

伯父さんはは立ち上がり、「どうぞ。」とガチガチに緊張した俺をカウンター席へ案内した。


「とりあえず、コーヒーでもどうかな?」

「あ、はい…」


そんな俺を見て、伯父さんは優しく微笑んだ。

相変わらず変わらない…昔の優しい伯父さんだった。


少し年を取ったと感じるものの、それがまた紳士的で男の俺ですら憧れてしまうようなそんな男性。


「どうぞ。ブレンドだよ。」

「い、いただきます…」


口にした瞬間、身体の中にコーヒーのが澄み渡っていくようなそんな感じがした。

これが伯父さんのコーヒー。


すごく美味しかった。


「正樹くんも大学生か。僕も年を取ったなぁ」

「そんな、とんでもないっす。」

「此処、よく分かったね。みんな教えてくれた?まぁそもそも、知ってるのかどうかも疑問だけどね。」


伯父さんは茶目っ気たっぷりに笑った。


「いや、その、まぁ、親戚中に手当たり次第に聞いたところです。」

「そう、お母さんは何も言わなかった?」

「母は、色々と勘付いていると思います。けれど、もう何も言ってこないです。」


母親との間で、伯父さんの話は暗黙の了解で禁句だった。


けれど、勘付いていると思う。

どうして、ここの大学を選んだのか。そして俺が何をしようとしているのかということも――



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