雨のち晴れ


その瞬間から、俺は紗子を守ろうと決意を固めた。
いや、むしろ伯父さんも大事に思っている紗子と一緒になろうと。

もちろん、紗子がどう思うか分からないし、それでもぶつかってみようと。やれることは、全部やる。

自分の人生において、初めて守りたいと思える人が出来た瞬間だった。


俺は出来限り、早く日本に戻れるように仕事に打ち込もうと決めた。
早く終われば、期間も縮まると小耳に挟んだからだ。

そして、伯父さんの訃報を聞いたのは、俺がアメリカへ発って1週間ほどした時だった。

結局俺は何も出来ず、あの日が伯父さんと会った最期の日だった。

もうあの時は言っていた通りすでに末期で、余命1ヶ月という宣告まで受けていたらしい。

伯父さんはそんな瞬間を全く見せなかった。

伯父さんはどんな気持ちだったんだろう?
そう考えるだけで、胸が痛んだ。


伯父さん、ありがとう。

伯父さんからたくさんのことを教えてもらい、たくさんのことを学びました。

そして伯父さんと過ごした日々は、本当にかけがえのないものだった。

俺はその気持ちを胸に刻み込んで、仕事に打ち込んだ。

そして仕事での成果も認められ、1年短縮して日本に戻ることが決まった。
アメリカでの上司にはこのままアメリカでやっていかないか、と提案されたが丁重に断った。


日本で、大切なものがある…と。


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