雨のち晴れ
帰国してから、すぐに俺はあるところに向かった。
「伯父さん、ただいま。帰って来たよ。」
それは、伯父さんが眠るところ———
俺は花を添え、静かに手を合わせた。
「遅くなってごめんなさい。」
梅雨に入る前の、とても綺麗な青空が広がった初夏のような気候だった。
あの日からちょうど2年。
「紗子のこと、俺に任せて。もう大丈夫だから。俺があの子のこと、守ってみせるよ。」
俺は静かに微笑んだ。
やっぱり、今でも伯父さんを亡くした悲しみで心は覆い尽くされる。
それでも、紗子を守ると決めた時の気持ちを思い出して俺は空を見上げた。
彼女の笑った顔を見たい。
過去のことなんて、忘れさせてあげるような、そんな素敵な日々を送らせてあげたい。
いつでも、澄んで晴れ渡っている世界を見せてあげたい。
雨なんて、降らないような…
それから、伯父さんに教えてもらった住所を頼りに、紗子の1週間ほどの行動を仕事の合間で時々見届けた。
自分がまるでストーカーのようだと苦笑いしつつ、彼女の表情を伺っていた。
どんな時も気を張っているような、強い女の子。それでも時々見せる悲しげな表情を見逃すことは出来なかった。
彼女の抱えるものを、全て理解しようなんて思っていない。そんなのただの自己満足。
ただ、少しでも彼女の心の拠り所になれれば、と思う。
惚れたら負け。そんな言葉を聞いたことがある。
俺は紗子に近付きたくて、もっと近くで守ってやりたくて。
彼女と関わることを決めた。
そして、とある梅雨の日。
俺は仕事終わりに、紗子のバイト先のコンビニに足を踏み入れたのであった————