雨のち晴れ


封筒をそっと見る。

マスターからもらった温かい言葉。


「……っ」

落ち込んでちゃダメだ。
どうでもいいだなんて、だめに決まってる。

マスターはこんな私を望んでない。前に進めって、そう思っている。

そう思うのに…どうしてこんなにも寂しい気持ちになるの?


「紗子。」

その時、正樹は座ったまま、私を包み込むように抱きしめた。

「ま…さき」

「俺がいる。」

「…っ」

「紗子はひとりじゃない。」

正樹がそう言った時、今までにない感情が身体の中を駆け巡った。
正樹と出会ってから知った温かさとは違う、優しくて切ないような、そんな気持ち。

私は正樹の胸に顔を埋めた。


「紗子のことは、俺が守る。ずっと紗子と一緒にいたい。」

全身で感じる正樹の言葉。

「紗子のことが好きだから、俺にとって何よりも大切なものだよ。
だから泣くな?もう紗子に悲しい思いは、俺がさせない。」

「正樹…」

「紗子に俺の気持ちは押し付けないし、前にも言ったけど、まだ答えを求めているわけじゃない。ただ俺が紗子の傍にいたいんだ。

ゆっくりでいいから。
紗子の中に俺少しでもいればいいよ。」


正樹の優しい言葉に、また私は涙を流した。


答えは確かに今出ないかもしれない。

けれど、もうハッキリしていることがひとつだけある。

私の中にいる正樹は少しだけではない、もう正樹でいっぱいなんだよ。

いつかちゃんと、このことを伝えるから。


だから私の中でハッキリするまでもう少し時間を下さい———

私はそう思って強く正樹の胸に顔を埋めるのであった。


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