雨のち晴れ
その後、私は化粧を直し、正樹と2人並んで紅葉を楽しんだ。
ひどい顔と呟く私に、「紗子はいつだって綺麗だよ。」と正樹は言ってくれた。
私は、秋晴れの綺麗な空を見上げる。
マスター、ありがとう。本当にありがとう。
私、マスターに出会えて幸せでした。
マスターがあの時、救ってくれなかったら、今どうなっていたのかも分からない。
マスターと過ごした日々は、かけがえのないもので、私の宝物です。
また会えるよね、ううん、絶対に。
その時は———
またマスターの美味しいコーヒー飲ませてね。
涙をぐっと堪えて、私は微笑んで空を見上げた。
そんな私を、正樹は隣で優しく見守ってくれている。
「今でも伯父さんは紗子のこと見てくれているよ。」
「うん、そうだよね。」
「なぁ紗子?」
「なに?」
「一緒に暮らさないか?」
「えっ?」
私は驚いて正樹を見る。
暮らすって……一緒に生活するってこと?
「俺のマンションで一緒に。家賃代とかも浮くだろ?」
「いや、でも…」
そういう問題ではない。
そもそも、私と正樹は付き合っているわけではないのだから。
そんな2人が一緒に暮らすのはどうかと思う。
「別に変なことしねぇよ?」
「あ、当たり前じゃない!」
クスッと笑う正樹。なによ、この余裕。