雨のち晴れ
「えっ、まさか紗子先輩!森岡さんと同棲とか…?」
さすが勘のはたらく絵里。しかしそこまではいっていない。もちろん今後もそうなる予定もない。
「違うってば。ほんとにただの気まぐれ。」
絵里にこんなことを聞いてしまったのは、きっと前にそんなことを正樹に言われたから。
そんな絵里はスマホを触りながら「はーあ。」と小さくため息をついた。
「もうすぐクリスマスですね~」
「そうね。」
もうすぐでクリスマス。だからと言って私は何かあるわけではないけれど。
「なんでため息?楽しみなんじゃないの?」
恋人がいる人にとっては一大イベントでは?
そう思い絵里に視線を送るものの絵里の顔は浮かなかった。
「絵里の彼氏は高校の先生だから…」
「だから?」
「イベントとか、休みとかそういうの関係ないんです。ぜーんぶ仕事!ましてやサッカー部顧問だから、デートなんてろくに出来ないんです。」
「そう…」
「それに、イケメンだから不安も多くて。信じてますけど、やっぱり不安です。
でも絵里のことを救ってくれた唯一の人だから、離れたくないんです。絵里、彼のこと大好きだから、困らせたくないし、負担もかけたくない。だから絵里は、どんな時も笑顔で行ってらっしゃいって見送るんです。」
さっきまでの声のトーンが嘘のように沈んだ声。
やっぱり、絵里の心の中って本当に読めない。
時々見せるこういう顔には、本当にびっくりする。
誰だって順風満帆ではないってことなんだね。
「クリスマスか~どうせデートはお預けなんだろうなぁ。紗子先輩は?」
「え、私?」
「森岡さんと過ごされるんですよね?」
「…いや、特にないけど。」
「えーっ、ダメです!!絶対に一緒に過ごしてください!!っていうか、もういっそのこと、告白のお返事しましょう!」
絵里は身を乗り出して話す。