雨のち晴れ


「えっ、まさか紗子先輩!森岡さんと同棲とか…?」

さすが勘のはたらく絵里。しかしそこまではいっていない。もちろん今後もそうなる予定もない。

「違うってば。ほんとにただの気まぐれ。」

絵里にこんなことを聞いてしまったのは、きっと前にそんなことを正樹に言われたから。


そんな絵里はスマホを触りながら「はーあ。」と小さくため息をついた。

「もうすぐクリスマスですね~」

「そうね。」

もうすぐでクリスマス。だからと言って私は何かあるわけではないけれど。

「なんでため息?楽しみなんじゃないの?」

恋人がいる人にとっては一大イベントでは?
そう思い絵里に視線を送るものの絵里の顔は浮かなかった。

「絵里の彼氏は高校の先生だから…」

「だから?」

「イベントとか、休みとかそういうの関係ないんです。ぜーんぶ仕事!ましてやサッカー部顧問だから、デートなんてろくに出来ないんです。」

「そう…」

「それに、イケメンだから不安も多くて。信じてますけど、やっぱり不安です。

でも絵里のことを救ってくれた唯一の人だから、離れたくないんです。絵里、彼のこと大好きだから、困らせたくないし、負担もかけたくない。だから絵里は、どんな時も笑顔で行ってらっしゃいって見送るんです。」


さっきまでの声のトーンが嘘のように沈んだ声。

やっぱり、絵里の心の中って本当に読めない。
時々見せるこういう顔には、本当にびっくりする。

誰だって順風満帆ではないってことなんだね。


「クリスマスか~どうせデートはお預けなんだろうなぁ。紗子先輩は?」

「え、私?」

「森岡さんと過ごされるんですよね?」

「…いや、特にないけど。」

「えーっ、ダメです!!絶対に一緒に過ごしてください!!っていうか、もういっそのこと、告白のお返事しましょう!」

絵里は身を乗り出して話す。


< 141 / 173 >

この作品をシェア

pagetop