雨のち晴れ


こちら側に向かって歩いてる男性。

もちろん車道を挟んだ反対側の歩道だから、向こうは全く気付いていない。

そして、その男性の隣には綺麗な女性。

「……。」

私はその場に立ち尽くし、目を見開いた。

だって、その男性は———正樹だった。

紛れもない、間違えるはずもない。
仕事終わりなのか、休みなのか、なんなのかは分からない…

けれどいつも通りスーツを着たピシッとした正樹と、ふんわりしたワンピースとコートを羽織り、可愛らしくマフラーした女性。

2人は楽しそうに笑いながら歩いていた。
時折、女性が正樹にボディータッチをしているように見えた。

誰だろう…?正樹の友達?

確かなのは明らかに仕事という感じではなく、プライベートだ。

友達や同僚にしては、親密過ぎるような…そんな気がする。
むしろ、人々の視線を集めるようなお似合いカップルに見えた。

その瞬間、私の中に様々な感情が渦を巻いた。

私は持っていたカバンをギュッと持つ。


そしてそんな私をよそに、2人はそのまま親しげにして、ジュエリー店へと入って行った。



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