雨のち晴れ
「ふふっ…」
私はその場で小さく息を吐くように笑った。まるで自分を嘲笑うように。
なぁーんだ。そうなんだ。そうなんだね。
脳裏には2人の姿がべっとりとこびりついていた。
私はクルッと足を反対方向に向け、今来た道を歩き始めた。
馬鹿馬鹿しい、時間の無駄。何もかも…
全身に力を入れて歩く。
そうでもしないと、今にも倒れてしまいそうだった。
全部、全部———嘘だったんだ。
何かもが、嘘。
「嘘…」
そう、嘘。
あの笑顔も、優しさも、温もりも、全部。
だって女性とジュエリー店って…
それだけで、もう全てを物語っているじゃない。
何もないわけがない。
言い訳しようが無いでしょう?
紛れもない〝彼女〟でしょう?
どんよりとした雲が空を覆う。
すべてが残酷のように思えた。この世界のもの、すべてが。
そしてやっぱり、私の心が晴れることなんて改めて無いんだと思った。
「…っ」
気付いてしまった…自分の気持ち。
私———正樹のことが好き…