雨のち晴れ


正樹のことが好きで好きで仕方ないんだ。

正樹が私のことを好きと言ってくれたように、私も正樹のことが好き。

今さら…今さらこんな気持ちに気付いてしまうだなんて。


ねぇ、正樹。どうして?

どうして嘘なんてついたの?

マスターが託した願いだったから?
私が不憫だったから?

でも…こんなのってあんまりじゃない。


マスターがいなくなって、ずっと光のない人生だった。

それを正樹は変えてくれた唯一の人。私を救ってくれた人。


私は最初、拒絶しながらもあなたを受け入れていった。

今ではもう正樹がいないだんて考えられないよ。

それくらい、もう私の中で正樹はいっぱいいっぱいなのに。


「どうして…」

最初から全部嘘だったなんて。

そんなこと信じたくないけど…
嘘だと言って欲しいけど…

さっきの2人がフラッシュバックしたかのように頭の中に浮かぶ。

消したいのに、消えない姿。


所詮私なんてまだ大学生のガキなんだね。

遊びだったんだね。

私は正樹の掌で転がらされてたんだね。


「…っ」

私はギュッと唇を噛み締める。


それなのに―――

正樹のこと、嫌いになんてなれないよ…


だって、私の心の中に覆い尽くすのは、正樹を信じたいという感情だけ。



私は家に着きそのまましゃがみ込んだ。


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