雨のち晴れ


約半年もの間、正樹と一緒にいて、確かに私と正樹の時間があった。

穏やかで、温かな時間。それは間違いなく存在した。

あれも全部嘘だったと言うの?


そんなの…そんなのそっちの方が信じられない。

「分からない…」

頭の中がぐちゃぐちゃだった。


「寒い…」

暖房が入っていない冷え切った部屋は、冷たく寒かった。


やっと気づけた自分の感情が、こんなにも悲しい時に分かってしまうだなんて。

つくづく、私ってこういう運命なんだなぁと冷静に考えてしまう。


私は電気ストーブのスイッチを入れ、インスタントコーヒーをマグカップに注いだ。

毎日と言っていいほど使っている、正樹からもらったマグカップ。

温かみのある色が、私の心を癒してくれるような気がした。


遊びなんかじゃないよね…?

嘘なんかじゃないよね…?


コーヒーをを飲みながら、ひたすらに自問自答を繰り返す。


半年前までの自分とは別人のように変わっていた。

こんな風に、誰かのことを考えることなんて無かった。

淡々と過ぎていく毎日。

正樹と出会って、生活に光と色が入って、何もかもが変わって見えた。


私は弱くなった。でもそれは違う。強くなったんだ。

正樹を受け入れることで、正樹を信じることで、そして正樹を好きななることで私は強くなった。


涙を流すことは決して弱いだけじゃない。

強さだって備わっている。


これが全部嘘だなんて―――信じられないよ。


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