雨のち晴れ
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「いらっしゃいませ〜」
外はとても寒くなり、ドアが開くたびに冷たい風が店内に流れ込む。
せっかく温かくなってきたのに、また空気が冷えてしまった。
店内のクリスマスの装飾がやけにキラキラしていた。
「よっ、紗子。」
相変わらず正樹の退屈の無い笑顔。
いつの間にか、ネックウォーマーに手袋をつけ始めていた。
「いらっしゃいませ。」
「なんだかここ最近、ずっと紗子、塩対応だよなぁ。なんかあったのか?」
「別に。」
「んだよぉ〜」
猫なで声を出す正樹に視線を送ることなく、私は商品を袋に詰める。
「寒くないの?」
「寒いって言うもんじゃない!もう凍える。」
「ならさ、もうわざわざ来るのやめたら?」
「えっ…」
自分でも驚くくらい低く落ち着いた声が出た。
「寒い思いしてまで来るところじゃないよ。まっすぐ家帰れば?」
私は相変わらず、正樹を見ることなく喋り続けた。
「紗子……」
声を詰まらせる正樹。
「なんか怒ってる?」
「何も。」
「俺が最近コンビニ来れないからか…?」
「違うよ。」
確かに最近、少しだけ正樹がコンビニに来る回数が減った。
年末に向けて、最後の仕事が立て込んでいるらしい。