雨のち晴れ
正樹のことが好きなのに。大好きなのに。
素直になれない。ましてや2番目の女。
私の人生って何なんだろう?
どうして私は生まれてきたの?
長年抱かなかった、そんな不満すら生まれる。
「朝比奈さん、今日もう上がっていいよ。」
「え?」
店長が心配そうに言った。
「と言っても15分早いだけだけど。なんだか今日顔色悪いし、15分くらい稼がなくても大丈夫しょ?」
それは、大丈夫だけれど…
「でも、店長一人に…」
「あー問題ないよ。今日暇そうだし、10時からは鈴木さんはいるし。気にせず上がって?」
「―――で、では…お言葉に甘えて。」
顔色悪かったのかな、不意に店長にそんなことを言われて動揺してしまった。
「うん、お疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
私はペコリと店長に頭を下げて、ロッカールームへ入った。
シンと静まり返ったロッカールーム。
きっともうすぐ鈴木さんがやって来るだろう。
私はスマホを見る。
もちろん連絡なんてあるはずもない。
それなのに、何かを期待して見る自分が可笑しかった。
もう、何もかも、早く忘れよう。
全部、夢だったんだもの。
私は静かにロッカールームを後にした。