雨のち晴れ


コンビニの裏手に出て、すぐだった。


「紗子っ…!」

私は足を止めた。
と言うより、まるで金縛りにでもかかったかのように、その場から身動きがとれなくなってしまった。


「紗子っ…!」

再びその声が近くなったかと思うと、背後から全身 温かいものに包まれた。

懐かしくて、ずっとずっと私が求めていたもの。


「ま、さき…」

同時に鼻の奥がツンとした。


「紗子、ごめん。色々、本当にごめん。」

「離して。」

「誤解してると思う。ちゃんと話たい。」

「お願い、離して。」

正樹が来てくれたことが嬉しいのに、それとは裏腹の言葉しか出なかった。


正樹が私を半回転させる。

私は唇を噛み締めて正樹を見た。多分、今にも泣きそうな顔をしているだろう。

「紗子…」

正樹はそう言って、私の頭を自分の胸の方に寄せた。


正樹の顔も苦しそうで悲しそうな顔だった。

そうさせてしまったのは、私。


そう思うだけで、涙が溢れて来た。私、本当に泣き虫になってしまった。

「…っ」


やっぱり正樹は温かくて。

私の心も身体もすべてを包み込んでくれる。


初めて出会った時から、ずっとそうだった。


私にとって、もう正樹は欠かせない存在。


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