雨のち晴れ


「ま、さき…」

私は正樹の服の裾を掴む。


「好き…」


「え…?」

「正樹のことが、好き…」


私はそう呟いた。

しばらく静寂が私と正樹を包み込んだ。


2番目でもいい。

正樹がもう私のことを好きじゃなくてもいい。


―――それでも、私は正樹が好き。


しばらくして正樹が呟く。

「やっと…やっと言ってくれた。」

「え?」

正樹は両手で私の顔を包み込み、上を向かせた。


「や、見ないでよ。」

泣いてるマヌケな自分の顔なんて見られたくない。


「どんな紗子も好きだよ。俺には紗子しかいないから。」

「…っ」

「紗子のこと、好き過ぎておかしくなりそう。」

「ま、さき…」

「俺にとって、紗子は大切な人。」

「う、ん…」

「紗子、愛してる。」


涙が止まらなかった。

言いたいことも聞きたいこともたくさんあるのに、何も言葉は出なかった。



ただ正樹が愛おしくて。

この温もりを離したくなくて。


この時、愛される喜びも、愛する喜びも、何もかもが私の身体の中を駆け巡った。


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