雨のち晴れ
「え、今なんて…?」
あれから私は正樹のマンションに来た。その間、何も話さずただ手だけを繋いで。
なんとなく、こんなふうにしていることも不思議だった。
今となれば、勢いで告白してしまったような気もするし、気恥ずかしい。
まともに正樹の顔を見ることは出来なかった。
それでも私が素直に思った気持ち―――正樹が好きという大切な気持ち。
恥ずかしかったが、伝えられてどことなく心が軽くなった。
ドクンドクンと波打つ鼓動。それがなんだか心地よい。
もちろん聞きたいことも、不安なこともたくさんあった。
それでも正樹は、私のことを好きだと言ってくれた。
だから信じたい。
そして、指先から伝わってくる正樹の体温に、不思議と安心した。
きっと、大丈夫だと―――
すっかり冷えた身体を部屋の暖房とストーブで温めた。
そして、正樹から手渡されたホットミルクを飲みながら、私はもう一度聞く。
「今なんて…?」
正樹はソファに座って苦笑いをしながら、床に座り込む私を手招きする。
「だからな、香織は妹なんだよ。俺の妹。」
妹……?
開いた口が塞がらないとはこのことだろうか?
なんだか私はとんでもない勘違いをしてしまっていたようだった。