雨のち晴れ
まともに思考回路が動かない中、おもむろに正樹の隣に座る。
「伯父さんのこと話したときに言っただろ?結婚して家を出て行った妹がいるって。
香織は俺より2つ下の妹で、今は1歳になる子供もいる。」
「え…」
「なーんか紗子ちゃん、よからぬことを考えていたんじゃないの?」
正樹はクスクス笑って私の頭をポンポンと触った。
「えっと…」
「ばーか。俺が他の女なんかに目を向けると思うか?俺は紗子のことしか見てねぇし、むしろ他のやつなんて視界にすら入って来ねぇよ。」
正樹は私の方にグッと身体を寄せる。
「でも、ま、誤解させたのは悪かった。あの時、香織も俺の腕を掴んでたもんな。言っておくけど、お互いにブラコンとかシスコンじゃねぇからな?」
正樹はクスッと笑った。
「香織、昔から身体が弱いからちょっと走ると息が簡単に上がっちまうんだ。
あの日も苦しくなったのかあの感じ。苦しくて無意識に掴んでいただけだと思う。」
「そう…なんだ。」
「…で、ちょっと今母親が入院してて。」
「え?」
急に話が飛ぶものだから私は目を丸くした。
「あ、大したことねぇの。もう1週間くらいで退院だから。
一応あの日は見舞いだったんだ。なーんかまだ微妙に親とは気まずいから1人じゃ行きにくくて、かといって行かないのも薄情かな、と。
だから香織が見舞いに行く日と、俺もなんとか仕事の合間で予定合わせて2人で行こうってなってたわけ。」
「そっか…そうだったんだ…。あ、だからお花屋さん?」
「そう、香織が花買うって言うからさ、あそこで落ち合ったわけ。」
そうなんだ、お見舞い……
私の気分はどんどん沈んだ。