雨のち晴れ
「えっ……」
これ――――
「宝石は母親のものじゃない。」
「……。」
「もちろん香織のものでもない。」
「……。」
「俺こういうの初めてで。どういうものがいいのか分からなくて、香織に少し手伝ってもらったんだ。」
「……。」
「紗子へのプレゼント。」
「え…」
私は唖然と正樹の手の中にある箱を見つめる。
そして、正樹は箱からそれを取り出し、私の左手を取り薬指にはめた。
「うん、ピッタリ。」
「ま、さき…」
私の左手薬指に輝く指輪。
ピンクゴールドのリングに花の形をしたダイヤモンドの指輪だった。
「メリークリスマス。」
時刻はちょうど0時を回った。
「正樹、これ…」
鼻の奥がツンとするこの感じ。あぁ、涙を流す前兆だと分かる。
「いつかは、2人の婚約指輪にしよう。」
「…っ」
「紗子、俺は紗子のこと裏切らないよ。」
「う、ん…」
「紗子、愛してる。」
そして、正樹は私に優しく唇を落とした。
どこまでも、どんな時も優しい正樹。
いつも私のことを想ってくれていて、大事にしてくれる正樹。
そんな正樹のとのキスは、やっぱり優しくて温かいものだった。