雨のち晴れ
過去と現在
**過去と現在**
別に今さらながら自分が可哀そうな子だとは思わないし、悲劇のヒロインぶるつもりもない。
自分の人生に悲観だってしていない。
むしろ、そんな感情すらなかった。
ただ生きるだけ。
とっくの昔に感情を持つこと自体、どこかに忘れてきてしまったような気がする。
トーストをかじりながら、ぼんやりと外を見つめる。
私は幼いころに母親を亡くした。
記憶はハッキリしないが、母親にも父親にも、普通に愛情を注がれ、普通に育てられたんだと思う。
でも、それが変わった。
母親が亡くなってからは、父親に捨てられいつしか連絡が取れなくなった。
そんな私は、親戚に引き取られることになった。
しかし、もともと両親が18歳でデキ婚、周りからの反対押し切った大恋愛だったせいもあり、親戚からの扱いはひどいものだった。
物心ついたころには、親戚内からの陰湿ないじめ、たらいまわしが普通だった。
小学校の運動会や授業参観、学芸会にはもちろん誰も来なかった。
だからいつも、お昼は先生たちと食べていた。
かろうじで、懇談会には来てくれたものの、何も話なんて聞いてもないだろう。
学校自体も楽しいとは思えなかった。
家がこんな状況だった私は、人と上手くやることなんて出来なかった。
友達なんて、いないに等しい。
先生たちだって、こんな可愛げのない子どもを相手になんかしたくなかったのであろう。
誰一人、手を差し伸べてくれる人はいなかった。
むしろ私が拒絶をしていたかもしれない。
でも不思議とそれが寂しいとも、悲しいとも、辛いとも感じなかった。
すでにこの頃から、私の心は冷めていたんだと思う。
父親に捨てられた瞬間から―――。
そんな私は、中学生になると同時に自ら施設に行くことを希望した。
別に自分を変えたいと思ったわけでもないし、中学デビューをしようと思ったわけでもない。
ただ、自分にとって、それが1番良い選択だったような気がした。