雨のち晴れ
「俺、森岡正樹。ま、詳しいことは徐々に話していくよ。それじゃ、また。」
不審者は、商品の入った袋を受け取り、お店を出て行った。
「……。」
私はしばらくその場に立ち尽くした。
え、何、本当に。誰、あの不審者、何?
「先輩~どうしたんですか?」
絵里がゴミ捨てから戻って来て、私を見るなり声をかける。
「いや…」
「ていうか、今さっきすごくイケメンのお客さん来ませんでした?なんか先輩と話していませんでした?」
「え…あの不審者のこと?」
「不審者?もぉ、やだなぁ、先輩何言ってるんですか~?」
可笑しそうに絵里は笑った。
そうだ、この子に話は通用しないんだった。
「ちょっとレジ替わってくれる?お水飲んでくる。」
「はぁーい、了解です!」
私はロッカールームに入る。
絵里、ごめん。5分、時間ちょうだい。
私はすべての細胞を使って考える。
あの男、何者…?
「……。」
私、ストーカーにでも遭っているのだろうか?
いや、でも人の気配なんて感じたことないし、なにかイタズラとかがあったわけではない。
それなら、あいつは何…?
私を守るなんていうことも言っていたし、また来るようなニュアンスのことも言っていた。
気味悪いな。
私は大きなため息をついた。
今日はなんだかついていない、やっぱり12位か。
私は、頭を振って戻った。