雨のち晴れ
私は、意識が固まる思いをした。
「ふっ、やっと俺に興味持ってくれた?」
私はその声を振り払うように、前へ歩き出した。
「ちょ、おまっ…待てよ。」
言うまでもなく、簡単に捕まってしまった。
見ると、にんまりと笑う森岡正樹がそこにはいた。
「おはよう、紗子。」
「…手、離して。」
不審者は、やれやれといった感じで、掴んでいた私の手を離した。
「俺のこと、気になっちゃった?」と、クスッと笑う不審者。
ちょっと、待って。その言い方って…
「アンタ、いつから気付いてたの…?」
いつから私が後を付けてるって…
「ん?最初から、ずーっと。全くもう、紗子ってば可愛いよな~俺のこと気になって気になってしょうがないんじゃん?」
私は一気に身体がカァッと熱くなるのを感じた。
嘘、やだ…
こいつ、最初から知っていたの?
私、まんまとこいつの罠にでも引っかかっちゃったの?
「…帰る。」
私が動こうとするのを、「ちょい、待てよ、そりゃないぜ。」と言ってまた制した。
「わりぃ、こういうのはフェアじゃねぇよな。ごめんって、でもその紗子の行動にちょっと嬉しくて。」
ヤツは困ったように、でも少しだけ笑いながら言った。
「べ、別に着いてきたわけじゃないし…!」
「ほー、じゃあ偶然にも?
こんなビジネス街に、大学の最寄り駅をわざわざ通り越して来たんだ?」
「っ…」
完全に私の負けだ。