雨のち晴れ



でも私、やっぱりコイツの瞳は見ることが出来る。


「紗子、今日講義は無いのか?」

「…うん、今日はね。今日はレポートやろうと思ってたから。」

「んで、俺を見つけて着いてきちゃったんだ?」

私はその台詞にキッと睨む。

「あーごめんって、んな顔すんなよ、な?」

そう言いながら、私の頭をポンポンと触る。


「ちょ、触んないでよ!ていうか、気安く名前呼ばないでよ!」

「んー、ここの近くにこの町の交流館があるんだ。」

私の話は無視ですか?

「俺、今日5時終わりなんだ。だから紗子、それまでそこで時間潰すっていうか、レポートやっててくれないか?」

「え、は…?なんでよ。」

いや、私帰るし。そう言おうと思ったら、不審者は笑った。

「夜飯、一緒に食って帰ろうぜ?」

「……。」


―――は…?

何を笑顔でこの人は言っているの?
なんで私がこの不審者と夜ご飯食べなきゃいけないの?


「意味わかんない、嫌よ。」

「けっこうそこの交流館、充実してるぞ?」

「いや、そういう問題じゃなくて。」

「紗子、今からまたとんぼ帰りすんのか?40分も電車、また乗るの?
正直、休憩したいところだろう?」

「それは…」

コイツ、肝心なところを突いてくる。

確かに言う通りだった。
慣れない長距離の電車、そして人混みで私の足はもうフラフラだった。

出来るならば、少し休みたいところ…。



< 31 / 173 >

この作品をシェア

pagetop