雨のち晴れ
でも私、やっぱりコイツの瞳は見ることが出来る。
「紗子、今日講義は無いのか?」
「…うん、今日はね。今日はレポートやろうと思ってたから。」
「んで、俺を見つけて着いてきちゃったんだ?」
私はその台詞にキッと睨む。
「あーごめんって、んな顔すんなよ、な?」
そう言いながら、私の頭をポンポンと触る。
「ちょ、触んないでよ!ていうか、気安く名前呼ばないでよ!」
「んー、ここの近くにこの町の交流館があるんだ。」
私の話は無視ですか?
「俺、今日5時終わりなんだ。だから紗子、それまでそこで時間潰すっていうか、レポートやっててくれないか?」
「え、は…?なんでよ。」
いや、私帰るし。そう言おうと思ったら、不審者は笑った。
「夜飯、一緒に食って帰ろうぜ?」
「……。」
―――は…?
何を笑顔でこの人は言っているの?
なんで私がこの不審者と夜ご飯食べなきゃいけないの?
「意味わかんない、嫌よ。」
「けっこうそこの交流館、充実してるぞ?」
「いや、そういう問題じゃなくて。」
「紗子、今からまたとんぼ帰りすんのか?40分も電車、また乗るの?
正直、休憩したいところだろう?」
「それは…」
コイツ、肝心なところを突いてくる。
確かに言う通りだった。
慣れない長距離の電車、そして人混みで私の足はもうフラフラだった。
出来るならば、少し休みたいところ…。