雨のち晴れ
「別に平気よ、少し休んだら帰るから。」
「まぁ、そう言うなって。それに行きは電車直通してたけど、帰りは乗り換えして帰らねぇといけねぇぞ?」
乗り換え…。
電車に不慣れな人なら、きっと誰もが嫌がる乗り換えという言葉。
「な?悪いことは言わねぇから。とりあえず、交流館にいてくれよ。仕事終わったらソッコーで迎え行くから。」
迎え…か。
「……。」
この不審者どうこうの問題じゃなくて…。
私はこういう予定の約束が好きではない、約束を破られてしまった時の自分が正直…怖い。
本当に笑ってしまう話だし、もう20歳になってまでこんなこと言ってる自分にも呆れてしまうけど、やっぱりいくつになってもそういうトラウマが消えることは無いようだった。
「顔、強張ってんぞ。」
「え…」
少しだけ俯き加減だった顔をあげると、不審者は優しく笑って私の頭にまた手を置いた。
「大丈夫、必ず迎えに行く。」
「……。」
なんだろう、この気持ち。
不審者のくせして、なんでこんなに私は落ち着く気持ちになるんだろう。
「交流館は3番出口出たらすぐ右手にあるから。ごめん、俺、そろそろ行かんとやべぇわ。
じゃ、あとでな、紗子。5時過ぎな。」
そう言うと、不審者は私の髪をわしゃわしゃっとして、どこかへ行ってしまった。
ポツンと、その場に残った私。
髪を整えながら「だから、触るなっつぅーの。」と呟いた。