雨のち晴れ
あれ、痛くない…
「セーフ。」
「え…」
目を開けると、アイツが私を抱きかかえていた。
「ダメじゃん、俺、待っててって言ったでしょ?」
「…っ」
「困った子だな。」そう笑って言ってアイツは、私を立たせてくれた。
私の荷物も足で落下をカバーしていて。
「なんで…」
私は目に前にいる不審者に、目をパチクリさせる。
「交流館行ってもいないんだもん。すぐに職員の人に聞いたら、さっき出て行ったって聴いて慌てて来たよ。どうせ迷子になっているんじゃないかってね。」
「どうせって…」
「言ったでしょ、必ず迎えに行くって。」
「……。」
この人は、どうしてここまで私に構うの?
約束を破ったのは私なんだよ、なのに、どうして追いかけてまで…
「なに泣きそうな顔してんだよ、ほら、行くぞ。あー、俺、腹減ったわ。忙しくて、ロクに昼飯食ってねぇし。紗子は?何か食ったか?」
私は静かに首を横に振った。
「よし、ならたらふく食べようぜ!」
不審者はまた笑って、私の手を取り歩き出した。
本当に、来た。
私は裏切ったのに、この人は追いかけてきた。
ねぇ、今こんなにも泣きそうなのはどうして?
この人は、〝不審者〟なんかじゃないのかもしれないね。
私はそう思いながら、森岡正樹に手を引かれて行った。