雨のち晴れ



「ここ、うまいの。」

森岡正樹が私を連れて来たのはイタリアンレストラン。

個人のお店だろうか。
店内はジャズが流れるとてもお洒落で落ち着く空間だった。

「俺ね、高そうなお店とかよりも、こういう優しい雰囲気のお店が好きなんだよね。」

意外だった。
だって、森岡正樹の見た目はどちらかというと、そういう高級なお店に行きそうな感じだったから。

ハッキリ言えば、そのピシッとしたスーツは、コンビニは不釣り合いなのだ。


「何食う?」

外食なんて、ほとんどしない。

本当に時々、喫茶店に行くくらいだから。

「カルボナーラ、食べたい。」

私はメニューも見ずにそう言った。

「……うん、いいよな、カルボナーラ。俺も好き。けど今日は違うの食おうっと。」

何、今の間?
普通に喋っているけど、なんか今、変な間なかった?

あ、やっぱりメニューも見ずに言ったのがおかしかったのかな?


私たちは、パスタのディナーセットを頼んだ。
私はカルボナーラ、森岡正樹は茄子とトマトのクリームソース。これにサラダと食後のドリンクがつく。


本当に、こんな得体も知らない人と食事に来てしまった。


「何、俺の顔見て考え事してんの?」

「別に、何も。」

「俺に何か聞きたいことないの?」

「……。」

正直、何から聞けばいいかも分からなかった。

あまりにも謎が多すぎて。


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