雨のち晴れ
「あなたは何者…?」
私があまりにも唐突すぎたのか、サラダを食べる手を止めてケラケラ笑った。
「な、なによ…、聞きたいことって言うから…」
「いやいや、いいのいいの。にしても紗子、いい。」
何、このちょっと馬鹿にされた気分。せっかく聞いたのに。
「何者ねー、ま、そのうち分かるんじゃね?」
「え、それ答えになってない。」
「フッ。あ、自己紹介な、改めて。」
森岡正樹は、背筋を伸ばし、コホンとわざとらしく咳ばらいをした。
「森岡正樹、27歳。職業は、生命保険会社で営業の方をやってます。外資系のため、実は去年までの2年間はアメリカに行っておりました。
趣味はそうだなぁ、ありきたりだけど読書と音楽鑑賞ってとこかな。」
ふーん、チャラそうなわりにしっかりしてるのね。
「どう?」
「どうって…」
「あ、紗子、携帯貸して?」
「え、なんで?」
「いいから、ほーら!」
私は言われるがままにスマホを差し出した。
それをひょいっと受け取り、森岡正樹はなにか触りだした。
「え、ちょ、いじるなんて聞いてない!」
人のスマホを勝手に触る?
私はてっきり、機種とか待ち受け画面とかそんなものを見るだけだと思っていた。
これは人付き合いの浅い私が馬鹿なだけ?
森岡正樹は何か操作をしながら言った。
「紗子ー、簡単に人に携帯なんか差し出しちゃダメだからなぁ?世の中悪い人だらけなんだから。」
「よく言うよ。」
「…っと、よし、登録完了!」
ニコッと笑って「俺の番号、登録しといた。」と言って私に差し戻した。
「はっ、勝手に何やって…」
信じられない、やっぱりこの人、頭おかしい。