雨のち晴れ
「何、考えてんの?」
「えっ?」
正樹がレジに寄りかかりながら、こちらを覗いてくる。
「紗子はさ、何か考えてるとき、ちょっとだけ顔が強張るんだよな。」
「……。」
私は頬に手をそっと当てる。
私は顔に出やすいタイプなのだろうか…。
「まぁ、そんなに一人で抱え込むなよ。俺がいるって、な?」
「別に私はあなたを求めていません。」
いいから、もう早く帰ってほしい。
こんな男に、自分の気持ちを見透かされた気分でとても憂鬱になった。
「紗子先輩~!」
ちょうどその時、トイレ掃除を終えた絵里がやって来た。
「あ、森岡さん、こんばんは。」
「こんばんは。」
このいつもの風景に慣れてしまったのか、絵里は正樹がこの時間にいて当然という対応を見せる。
「そうそう、先輩、急なんですけど明日ってシフト替わってもらえます?どうしても外せない用事が出来ちゃって…。」
「あ、うん、いいよ。夕方から?」
「そうです、いいですか?」
「了解。」
「わーい、ありがとうございます!紗子先輩大好き~!」
そう言って私に飛びついてくる絵里を引き離す。
「いちいち、くっつくないで。」
私がどんなに冷たい対応でも、絵里は何も感じないのかニコニコ笑うだけ。
本当に、世の中モノ好きもいるよなぁと思う。
「明日かぁ、俺明日はこっち来れそうにないんだよな~明日は多分残業だから。」
そして、目の前にももう一人。
「来なくていいです。」
私は、正樹をチラッと見てそう言った。