雨のち晴れ



次の日、私は絵里の代わりに出勤をし、いつものように仕事をこなした。

「あれ、朝比奈さん、今日、絵里ちゃんと交代なんだ?」

「はい。」

シフトに入っていた鈴木さんに言われた。

30歳男性、フリーター、独身。

鈴木さん的には愛想のない私より、可愛げのある絵里の方がいいんだろう。
皮肉にも絵里は鈴木さんのこと、嫌っているけど。


9時過ぎ。

正樹がやって来る時間帯、けれど言っていた通り来なかった。

なんか、久々の静かなバイト。

だいたい正樹はやって来るし(私のシフトを知っているかのように、やっぱり不審者)、正樹が来なくても、絵里が入ってからは絵里と組むことが多いから、何かとうるさいのだ。

まぁ、これがもともとのスタイルなんだよな。


私は時計を見る。

やけに時間が経つのが遅かった。


「お疲れ様でした。」

深夜番の人とそのまま交代をして、一言、鈴木さんに挨拶だけして私は退勤した。

ふう、とりあえず2日間お休みだ。

久々に長い連勤だった、やっぱり疲れるな。


駅を出て、私はふと右手の遊歩道が視界に入った。

夜は人通りがほとんどない遊歩道、けれど家には何よりの近道だった。
いつもは絶対に通らない、暗いし、危ない。

「……。」

正直身体はクタクタだった。

私は、いつもと帰る道ではない、遊歩道の方に歩いて行った。


大丈夫よね、人通りが少ないって言っても、昼間は人がたくさんいる道だし、駅から近いし。

私は早歩きで進む。

早く帰りたかった。



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