雨のち晴れ
「おとなしくしろよ」
低く太い男の声だった。
「……っ、」
男が私にのしかかり、服をはぎ取ろうとする。
恐怖のあまり、私は何も声が出なかった。
ただ必死になって抵抗するも、なにも敵わなかった。
どうしよう…っ
頭がパニック状態に陥る。
「へーいい身体してるなぁ」
男の息が顔にかかり、身体中を触ってくる。
このままだと……
私は必死に片腕を伸ばし一緒に吹っ飛んだカバンを探す。
幸い頭のすぐ上にあり、外ポケットに入れてあるものを取り出した。
そして――――
ビビビビビビビビビ…
静寂な夜を切り裂くようにけたましい音が鳴り響いた。
「チッ…」
男は舌打ちだけすると、慌ててその場を離れていった。
私はそのまま防犯ブザーの音を止め、よろよろと遊歩道の方へ這った。
まだ頭の中は真っ白だった。
ガクガクと身体が震えた。
顔や腕、足には土がついていた。
そして男に触られた感触がまだ残っている。
「……っ」
恐怖で息が苦しかった、上手く空気が吸えない。
とにかく怖くて怖くて、掴まれた肩は激しく痛んだ。