雨のち晴れ
ありがとう
**ありがとう**
「今日は俺ん家、泊まってきな。」
そう正樹は言って、タクシーで正樹の家へと向かう。
「大丈夫、変なことは誓ってしねぇよ。」
そう微笑む正樹。
いつもならツッコミのひとつくらい言うところだけど、正直、今日は私も一人になりたくなかった。
またあの恐怖が蘇ってきそうだったから。
正樹は、きっとそんな私の気持ちも知っている。
「防犯ブザー、役に立った。」
そんなことをポツリと言う私の頭を正樹は自分の方に寄せる。
「怖い思い、させたな。」
「……。」
「守るって、俺、最初に言ったのにな。ごめん。」
私は小さく首を横に振った。
「もう謝らないで。」
目を閉じて、正樹の心音を聞く。
心地よい、安らげるときだった。
「ここ、俺ん家。」
着いた場所はタワーマンションだった。
私は言葉を失う。
正樹、こんなところに住んでるんだ。
「入って?」
初めて入る男性の部屋、そもそも他人の部屋になんて入ったことないけど。
またまた私は驚いた。
てっきり、シックな感じとか、モノトーンみたいな感じで統一されている部屋かと思いきや、木目の家具で揃っていて、温かみのある部屋だった。
木―――
私の部屋にしてもそうだし、マスターにも似ているな、なんて思った。