雨のち晴れ
「電話…」
「え、電話?」
正樹が私に近寄り目の前に立つものだから、私は正樹を見上げた。
正樹ってこんなに身長高かったんだと改めて思う。
「ごめん、電話してたの気に障った?」
「ちが、そうじゃなくて…今の電話って、お仕事だよね?」
私は伏し目がちに聞いた。
「今日、残業だったんだよね?私、それなのに…」
しばらく黙り込む私に、正樹は「バァーカッ」と強めに言った。
そして私の濡れている髪を、タオルでわしゃわしゃっとした。
「そんなこと気にすんな、紗子が考えることじゃねぇよ。
仕事より紗子の方が大事に決まってる。」
「正樹…」
「それより俺は紗子があんな目に遭う方のがよっぽど辛い。」
私は首を横に振った。
「少しは落ち着いたか?」
「うん。」
「そうか、なら良かった。
つぅーかさ、風呂上がりてやべぇな。」
「え?」
正樹はニヤッと笑った。
「紗子、すげぇエロい。」
「なっ…」
こいつ、何言い出すかと思いきや。
何が、俺は紗子があんな目に遭う方のがよっぽど辛いよ!
「馬鹿。」
私はそう呟いて、スッと正樹の間を通り抜けソファへ座る。
そこへ正樹が「なぁ紗子。」と言って私の隣へ座った。
「なに?」