雨のち晴れ
「紗子は、俺のことどう思う?」
「どうって…」
「意外と何も聞いてこないよな、俺のこととか。」
「……。」
「だって、普通気になるだろ?色々と。」
別に正樹のこと、色々と気にならないと言えば嘘になる。
「興味ないから、私。他人には興味ない。」
そんなことを口走る私。
「そうか…
それでも紗子が俺に電話をくれて、不謹慎だけど嬉しかった。頼ってくれて、嬉しい。紗子の中に、俺の存在が少しはあるんだって思えた。」
正樹は…
少しじゃないよ、私の中でどんどん大きくなっている。
興味がないとかではないのかもしれない。
これ以上、進んでしまうのが怖いんだ。
こんな気持ち、持つことが怖い。
また裏切られるんじゃないかって、あんな思いはもうたくさんだから。
「あと、紗子が俺のこと名前で初めて呼んでくれた。ガキ臭いけど、嬉しかったぜ?」
「それは…」
正樹はフッと笑って、飯食うかと言って立ち上がった。
「あ、正樹っ…」
「ん?」
「あの、その…」
私は俯いていた顔を上げ、正樹を見る。
そこにはいつも通りの優しい瞳。
「あ、ありがとう…」
「え?」
「その、だから、ありがとう。」
正樹はくしゃっと笑った。
「ん、髪乾かしておいで?」
「うん。」
私は赤くなっているであろう頰を隠すようにして、リビングを出た。