雨のち晴れ
「…美味しい。」
そう呟く私に、正樹が「だろ?」と言って笑った。
正樹が親子丼を振舞ってくれた。
短時間で、このクオリティはすごい。
「といっても俺の数少ないレパートリーの1つだけどな。紗子は料理するか?」
「うん、まぁ。」
「そうか、なら今度作ってもらわないとな。」
向かい合ってご飯を食べる。
いつかの夜ごはんも、こうして食べたな。
あの時はカルボナーラ。
「良かった。」
「え?」
「やっと少し、紗子の表情が落ち着いた。」
優しく正樹は微笑む。
私はその笑みにまたどこか安心した。
「誰かと食べるっていいよな。一人じゃやっぱり美味くねぇよ。」
一人じゃ…ね。
確かに、いつもご飯は一人で食べてる。
いつもと同じなようで、違うのかな。
「紗子、いつでも来いよ?」
「行かない。」
「あらら、またツンツンな紗子ちゃんに戻っちゃいましたか。」
そう言ってクスクス笑う正樹。
本当に自分でも可愛くないと思う。
「ここって…どこ?」
「ん?」
「いや、最寄り駅ってどこかなって。」
「お、来る気になった?」
「ちが…ただどこかなって。」
「ここはT駅が最寄りかな。で、俺の会社はM駅の方。」
「えっ…」
今、なんて…??
「M駅?」
私は目を見開いて、正樹を見る。